アースタックス税理士法人は、お客様の事業の発展に貢献するソリューションをご提供します。

香港における受動的所得にかかる国外源泉(オフショア)所得非課税制度の改正について

香港における受動的所得にかかる国外源泉(オフショア)所得非課税制度の改正について

2022年11月10日 お知らせ

香港における受動的所得にかかる国外源泉(オフショア)所得非課税(Foreign Source Income Exemption、以下「FSIE」)制度の改正条例案のもと、一定の要件を満たさない限り、特定のオフショア受動的所得は香港源泉所得とみなされ、事業所得税の課税対象とされることとなりました。

背景

2021年10月5日、欧州連合(EU)は税務上非協力的な国・地域EUリストの更新を承認し、香港における受動的所得にかかるFSIE制度が二重非課税の状況につながり得るという懸念から、香港をグレーリストに追加することを発表しました。香港政府はこれを受けて、2022年10月28日にFSIE 制度改正条例案を立法会に提出し、当該条例案は立法プロセスを経た後、2023年1月1日より発効されることとなります。

対象納税者

多国籍企業(Multinational Enterprise、以下「MNE」)グループの構成事業体。 MNEグループとは、グループの最終親会社の所在国もしくは地域以外に事業体または恒久的施設を少なくとも1つ保有しているグループをいいます。

対象所得

香港のオフショアから受け取る受動的所得
– 利子
– 配当
– 株式譲渡益
– 知的財産(Intellectual Property、以下「IP」)所得

FSIE 制度改正条例案のもと、香港で事業を展開するMNEグループの構成事業体は、その資産規模や収益規模に関わらず、特定のオフショア受動的所得を香港で受け取った場合、当該所得は香港源泉所得とみなされ、事業所得税の課税対象となります。ただし、当該構成事業体(納税者)が以下のいずれかの要件を満たした場合、当該所得は引き続き非課税とされます。
– 経済的実体要件(利子、配当及び株式譲渡益に適用)
– 資本参加免税制度(配当及び株式譲渡益に適用)
– ネクサスアプローチ(IP所得に適用)

非課税要件

(1)経済的実体要件

(a)納税者が純粋持株会社である場合

  • 香港会社法に基づく会社の申告要件を遵守していること
  • 香港で特定の経済活動(株式の保有と管理)を実施するのに十分な人材及び固定的施設を有していること

(b)納税者が純粋持株会社でない場合

  • 香港で特定の経済活動(資産の取得・保有・処分に関する必要な戦略的意思決定の実施、および当該資産にかかる主要なリスクの管理と引受)を実施するのに十分な人数の従業員を雇用していること
  • 香港で特定の経済活動を実施するのに十分な金額の営業費用を負担していること

経済的実体要件が満たされるかどうかを判断する場合においては、個別事案ごとに事業の性質、業務規模、経営陣の質的および量的側面などを総合的に検討することとされています。

また、特定の経済活動を第三者へ外部委託する場合においても、特定の経済活動が香港内で遂行され、かつ対象納税者が適切に監視していることを証明できる時は、経済的実体要件を充足することとされます。

(2)資本参加免税制度

MNEグループの構成事業体は、香港居住者または配当もしくは株式譲渡益を受け取る非香港居住者で香港に恒久的施設を有する者である必要があります。また、配当もしくは株式譲渡益が発生する直前12か月以上継続して5%以上の持分を保有している必要があります。

資本参加免税制度には、以下の乱用防止ルールが設けられています。

  • スイッチオーバ―ルール(Switch-over rule)
    配当所得において、投資先企業の利益が15%未満の税率が適用される海外の国や地域において課税されている場合、納税者は資本参加免税制度を利用できません。その代わり、当該所得に帰属する香港の事業所得税額を限度として外国税額控除を適用することができます。
  • アンチハイブリッド・ミスマッチルール(Anti-hybrid mismatch rule)
    配当所得において、配当の源泉となる利益が海外の国や地域において課税されている場合、その投資先企業が配当金の支払いを損金算入できる時は、納税者は資本参加免税制度を利用できません。
  • 主要目的ルール(Main purpose rule)
    主要な目的が税制上の優遇措置を受けるためのものであると認められる場合には、資本参加免税制度を利用できません。

(3)ネクサスアプローチ

適格IP 資産からの所得について、ネクサス比率に基づき、税制上の優遇措置を受けられます。ネクサス比率は、適格IP 資産を開発するために納税者が負担した全支出に対する適格支出の割合で計算されます。

二重課税防止措置

今回の改正に伴って、片務的(ユニラテラル)税額控除が導入されました。その結果、MNEグループの構成事業体が、事業所得税の対象となる特定のオフショア受動的所得があり、海外の国や地域において法人税(同等の税金)を支払った場合、香港と包括的な二重課税協定(CDTA)を締結しているか否かに関わらず、二重課税防止措置が利用できることになります。

今後の対応

FSIE 制度改正条例案は2023年1月1日から発効される予定です。今回の改正に影響のあるMNEグループの構成事業体は、今後税務局から公表される予定の当該改正に関する実務ガイドラインを参考にして、経済的実体要件を検討する必要があります。また、経済的実体要件を満たしているかどうか、税務局に事前確認を行う制度も設けられる予定です。

2022年11月10日 お知らせ
TOP